外国債券(為替ヘッジなし)のリスクは、ほとんど為替から来るという話

掲題の件、ちゃんと数式にしておく。
以下、使うものの定義

  • (お持ちになられている)外国債券の時点tでの現地通貨建て価格(面倒なのでUSD仮定):  P_{USD}(t)
  • (お持ちになられており、日々一喜一憂しているであろう)外国債券の時点tでの円建て価格:  P_{JPY}(t)
  • 時点tでのUSDJPYレート: USDJPY(t)
  • 日次リターン(P(t)はある価格、tは日付を仮定): R(t) = P(t)/P(t-1) - 1
  • 日次リスク(リスク=標準偏差で定義、stdevは標準偏差):  Risk(t) = stdev(R_t)


まず、外国債券価格(円・ドル建て)の間には以下の関係が成立する。
これは「証券価格を表示する通貨を変更しますよ〜」というだけなので、自明である。
 P_{JPY}(t) = P_{USD}(t) \times USDJPY(t)

従って、外国債券(円建て)のリターンは
 R_{JPY}(t) = P_{JPY}(t)/P_{JPY}(t-1) - 1 = \frac{P_{USD}(t)USDJPY(t)}{P_{USD}(t-1)USDJPY(t-1)} -1=(1+R_{USD}(t))(1+R_{USDJPY}(t)) - 1
となる。正しここで、

  •  R_{USD}(t) : 外国債券(ドル建て)
  •  R_{USD}(t) : USDJPYレートのリターン


である。更に上式は
 R_{JPY}(t) = (1+R_{USD}(t))(1+R_{USDJPY}(t)) - 1 = R_{USD}(t) + R_{USDJPY}(t) + R_{USD}(t)\times R_{USDJPY}(t)
と整理できる。
さて、通常、 R_{USD}(t)\times R_{USDJPY}(t) R_{USD}(t), R_{USDJPY}(t)に比べて小さい(日次のリターンは%のオーダーなので、100分の1程度小さくなると期待できる)ので、無視できるとすると、

 R_{JPY}(t) = R_{USD}(t) + R_{USDJPY}(t)

となり、”外国債券(円建て)のリターンは外国債券(ドル建て)と為替(USDJPY)リターンの和になる”という綺麗な関係式が得られる。

従って、外国債券(円建て)のリスクは

 Risk_{JPY}(t) = stdev(R_{USD}(t) + R_{USDJPY}(t)) = \sqrt{stdev(R_{USD}(t))^2 + stdev(R_{USDJPY}(t))^2 + 2 \rho \cdot stdev(R_{USD}(t)) stdev(R_{USDJPY}(t)) }

となる。ただし \rhoは”外国債券(USD建て)のリターンと為替(USDJPY)リターンの相関”である。

上式の√の中で何が(通常)支配的にふるまうかというと、為替(USDJPY)のリスク stdev(R_{USDJPY}(t))なんでまぁそういうことなんです。